KEIKO KOMA

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更新日 2010-01-09 | 作成日 2008-03-30

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過去を思い出している訳ではなく、未来へ向かう何かがひも解けていく感覚があります。
笑美ちゃんが、「高麗さんは、オーストリアの人に伝道されたのですね」と話しかけてきました。「そう、マーガレットという大きな女性で…」と話し始めた時、忘れていたことなのに口をついて出てくる言葉に、自分自身驚きました。19才の秋、思い悩み、ふと京都へ行きたくなり、旅の計画を立てました。「父」の詩に書いている場面です。京都へ行く前日、吉祥寺に買物に行きました。サンロードでふと聖書を持った外国人の女性が私に話しかけてきました。アンケートをとっていました。聖書に興味がありますかと聞かれ、「もちろんです」と答えました。私は、聖書の勉強会を行なっていました。アンケートが終わり、その場を立ち去りました。京都へ行く時、駅で再びその女性に会いました。にっこり笑い、会釈し、私は電車に乗りました。京都の秋、夢の中でその女性に会いました。行きずりの人なのにと不思議な感覚がありました。
私は、友達と別れ、一人で、ある人に会いに六甲山に向かいました。秋の夜風に吹かれながら、向かい合わせの4人掛けの座席に一人座り、期待と不安を胸に向かったのです。帰り道、大きな絶望により胸に穴が開いてしまったようで、電車の窓から吹き抜ける秋の風が心にしみてくるのです。吹かれる度に冷たくしみ入り、私は胸に開いた大きな穴が決定的になっていく不安と恐怖に震え、友達の待つ京都の宿に辿り着きました。出かける前とは別の私になっていました。たった5時間経っただけなのに、出かける前に胸ふくらませ向かった私は、今はもういません。
 東京に帰った私は、ふと立ち寄った店の前で、偶然にもオーストリアの女性に会ったのです。そして、初めて話をしたのでした。