何年か前のある朝、夢とも現実ともつかない程はっきりとした香りで目が醒めました。とってもうれしかったです。春の朝陽が輝く台所で、母が大福をふかしている香りがしたのです。私は、起きて台所へ行こうとしました。その時、母は亡くなって、いない現実に気づき、うれしい気持ちは消えてしまいましたが、大福をふかしている香りは消えませんでした。何かとっても大福をつくりたくなり、材料を買って作りだしてしまったのです。作り方は知りませんでしたが、作りはじめたのです。懐かしくて、うれしくて、知らないはずなのに、お餅になった大福の生地にあんこを入れ、おまんじゅうにする時、幼い時に母と一緒に作った時のことが蘇ったのです。そして何と立派な美しい大福が出来上がったのです。体は覚えていることに驚き、とっても楽しかったのです。亡母は、5月になると、よもぎを採ってきてよもぎ餅を、子供の節句には柏の葉を採ってきて柏餅を作ってくれました。その時の香りまで蘇り、しあわせなひと時でした。ちょうど去年の5月1日に私は、会合があり大福をたくさん作ったことを、春の風と共に思い出しました。